大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)8662号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(1) 検証の結果によれば、本件(二)建物は、木造モルタル塗総二階建の二階部分であり、検証時点即ち昭和四六年四月一九日現在に於て居住者はおらず、屋根、天井板、壁の大部分は、最近の火災により焼け落ち、床板も部分的に相当程度はがれ、梁、柱、桁等のほとんどが焦げ、柱も床に対し垂直でない部分もあり、又柱と桁との接合部分に隙間を生じている部分もある。

以上の事実よりみれば、火災後の本件(二)建物は、社会通念に照して、建物としての社会的、経済的効用を失うに至つているものということができる。

(2) しかしながら、朽廃とは、建物が自然の推移により腐朽損壊しその効用を失うことをいうのであるから、右火災による損壊を考慮することはできず、従つて、右火災がなかつたとしても、原告主張日時即ち昭和四六年三月二日までに本件(二)建物が朽廃したか否かにつき考えるべきものであるから、右の点につきさらに判断する。

<証拠>を総合すれば次の事実を認めることができる。本件(二)建物は、昭和一四、五年頃建築された木造モルタル塗瓦葺二階建の二階であり、地盤が低地を埋め立てた事情から軟弱であつた。本件火災以前も、外壁、天井の一部分はモルタルがくずれ落ち、その下の木部が露出している部分があつた。本件(二)建物の階下である本件(三)建物は既に人が住んでいない状態であるが、本件(二)建物には四世帯が居住していた。西側の木製屋外階段は腐蝕し使用不能であり、東側の非常木製屋外階段が除去されたままになつていた。昭和四二年一〇月三一日世田谷消防署消防士長鈴木末吉から、同日本件(三)建物に対する消防法第四条の立入検査の結果として、原告に対し火災予防ならびに火災時の災害防止の観点から、七項目にわたる補修箇所が指摘され、そのころ被告に対しても本件(二)建物につき同様の通知がなされた。

(3) さて、建物の朽廃とは、当該建物を全体的に観察して、建物としての社会的経済的効用を失うに至る程度に腐朽損壊することであるが、さらにこれを詳説すれば、右の程度とは屋根、壁、柱、土台などの各部に甚しい腐蝕があり、そのままでは居住などの建物利用に危険を伴ない、かつこれに修理を加えるとしても新築に近い大改造を要し、経済的には新築する方が有利であると判断される程度をいうと解される。そうすると、前記(1)において認定した事実のみをもつてしては、本件(二)建物が原告主張の時までに朽廃の域に達していたと解しえないことはいうまでもなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。もつとも原告本人尋問の結果中には、本件(二)、(三)建物は修繕がきかない旨の部分があるが、それが何故かの点については漠然としていてただちに措信することができない。なお附言すれば、原告は本件において現に原告が訴外伊東に対し本件土地賃借権を有すると主張しているのであるから、原告自身本件(二)建物の一階にあたる本件(三)建物が未だ朽廃の段階には至つていないと解していることは明らかである。この事実もまた本件(二)建物の朽廃の有無の判断について主要な関係があることはいうまでもない。(石川義夫 早井博昭 満田忠彦)

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